景観重要建造物 有川家住宅主屋

有川家住宅は、旧中山道鳥居本宿の北端近く、街道が大きく鉤手に曲がるところに位置しています。
今日も名産「赤玉神教丸」を製造・販売する店舗です。赤玉神教丸は下痢・腹痛・食傷などに効果のある妙薬で、多賀大社の神教によって調合したためにその名があるといいます。万治元年(1658年)頃の創業と伝え、店舗販売を主に、各地の薬屋と特約して取次販売等も行いました。最盛期には製造職人・販売人・番頭など合わせると80人余に達したようであり、その店舗販売のにぎわいは「近江名所図絵」などにも描かれるほどでした。現存する建物は宝歴年間(1751年〜1764年)の建立と伝え、幕末の和宮降嫁や明治天皇の北国巡行の折には小休所に当てられました。その屋敷構えは大きく間口23m、奥行き32mを測ります。堂々とした建物外観、機能的な建物構成は、江戸時代の店舗の姿を良好に留めていると言えるでしょう。

街道に面した主屋は、外に防火用の土戸を配し、2階正面には1間幅の虫籠窓が3つ並びます。数次の増築と各所に飾る破風などが配され、複雑な屋根組となっています。主屋の内部は3列構成で、東列が「おおにわ」「くちのま」「なかのま」「ざしき」、中列が「おおみせ」「かみだいどこ」「ぶつま」「なんど」、西列が通り庭に面した「こみせ」「しもだいどこ」「ながし」です。東列の「おおにわ」には接客用の竈が設けられているのに対して、西列通り庭は内向きで明確に区分けされています。主屋2階は、街道に面して「おとこにかい」「にしのにかい」、奥に「おんなにかい」があり、使用人の寝室などに当てられました。また、これら諸室の東側には、神棚をもつ「しんでん」や、床・棚を構えた「しんにかい」などが明治になって新たに増設されています。主屋の背後には「ざしき」より景色を楽しむための庭園が設けられており、文庫蔵と粉挽蔵が棟を連ねています。
主屋の東は、明治11年の天皇行幸の際に新設されたものです。門を設け、式台から「げんかんのま」「なかのま」「つぎのま」へと進み、「つぎのま」の東側には1段高く「じょうだんのま」を構えた本格的な書院造となっています。「じょうだんのま」の奥には「さいのま」を経て別棟の湯殿へと続きます。

景観重要建造物 有川家住宅主屋

所在地滋賀県彦根市鳥本町
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