彦根市のびわ湖沿いの道路は「さざなみ街道」と呼ばれている。
琵琶湖松原水泳場を過ぎ、北へ走ると、「BIWAFRONT彦根」を左に、右へ廻るカーブがある。その二車線の舗装道路の外側フェンスに近い岩の上に高市黒人の歌碑が建立されている。
磯の崎 漕ぎ廻み行けば 近江の海 八十の湊に 鵠多に鳴く
枝ぶりのよい松の木をまわりに配し、美しく整備されていて、冬の西風にさらされ、波しぶきに洗われても存在感を誇示している。
歌碑の置かれたこの場所はほんのわずかながら彦根市ではなく、米原市磯町に所属する。ところが、黒人が見たはずの「八十の湊」は彦根市の八坂町ではないかという説がある。
磯の崎を漕ぎめぐって行くと、船の上から次々と見えてくる河口の港ごとに「鵠」が鳴いている。芹川・犬上川・宇曽川・愛知川などの河口が視野に入り、印象はさわやかで、鳴く声の中にどこか哀愁がこもっている。